前回は、英語と家庭科の準備員よりお話を伺いました。
※第3回 英語と家庭科が描く愛総中 ~問いかけ考え、幸せを創る~
※第2回 数学と保健体育が描く愛総中 ~関わり考え、興味を持つ~
4回目の今回は、愛総中準備員の社会担当Sさんと、技術担当Mさんからお話を伺います。SさんとMさんは、中学校教諭として勤務されています。


――開校準備も大詰めを迎え、入学者選抜を1ヶ月後に控えている今の率直な気持ち、感想を教えてください。
Sさん:準備委員となって9か月が経ち、多様な経験をさせていただきありがたいです。教科書選定のための調査から始まり、学校のきまりを一から作りあげるまで、学校の根幹に関わることを一から考えるという、普通は経験できないことをさせていただいています。また、準備員の方々と知り合えたことはもちろん、企業の方々とお話しをさせていただく機会もいただき、自分がこれまで関わることのなかった繋がりが生まれている実感があります。
Mさん:4月から開校準備に携わらせていただいて、誰もができる経験ではないので、本当に貴重な経験をさせていただいていると思っています。というのも、ゼロから新しい学校、新しいものを作る楽しさ、ワクワク感が、この半年以上の活動を通して自分の中ですごく増え続けています。固定観念や、前例の踏襲というものの考え方ではなく、何か新しい試みをやってみようとか、何か面白いことはできないかという考え方に、少しずつ自分の中で変化しているのを感じています。おそらく、今回の経験や人との出会いがなければ変化することはなかったのではないかと実感しています。
――お二人の話に共通する言葉として、経験と人との関わりがありましたが、この準備員会での経験は、4月に入学する生徒たちにどのように還元されますか?
Sさん:出会った企業の方と生徒を繋げることが、直接的にこの経験を還元する方法だと思います。しかし、間接的な還元の方が大きいと思っていて、準備員会に参加することで、私の人生の経験値を上げることができていると感じています。まだ具体的にこうなるというイメージは持てていないのですが、生徒との関わりにおいて、じわじわとこの経験が生きてくると思います。
――10年後に、「今こうしてるのは、準備員会があったからかな」と思えたら素敵ですよね。

Mさん:私はどちらかというと想像力が豊かな方ではなく、決められたことを着実に実行し、改善を積み重ねることを好む性格です。しかし、愛総中の準備員会での経験から、新しいことに挑戦することへの抵抗感が小さくなったと思いますし、どうやってブラッシュアップしようかと考えることの楽しさが増しました。この自分の中で起きた変化を、生徒に伝えたいです。「ワクワクが成長を生むんだよ」というふうに。ぜひ生徒の皆さんにも体感してほしいことです。
Sさん:日々の生活を積み重ねることはとても大切なのですが、一生懸命がんばりすぎると、どうしても視野が狭くなってしまっている自分がいたと感じています。固定観念のようなものができあがって、その中で何が正しいか、どうしたらいいかとずっと考えてきた気がします。それがこの開校準備というこれまでとは異なる刺激をうけたことで、私の成長が促進されたのかもしれません。
――成長という言葉も共通して出てきましたが、人が成長する瞬間って、どんなときでしょうか?
Mさん:ワクワクが大きいと思っています。最近よく動画サイトで、会社経営者のように学校の教員ではない人の話を聞くことが増えました。働き方改革と聞くと勤務時間をイメージすることが多いですが、面白く仕事に向かえるようにすることも大事だなとか、視点や切り口が複数あることを痛感しました。このような、ワクワクや痛感するなど、感情が揺れ動くとき、成長の入り口に立っている気がします。
Sさん:先日準備員会の研修で行った「グラフィックファシリテーション」が私の成長の瞬間でした。最近、子どもたちに対しても、ティーチングではなくコーチングが必要な場面が数多くあると感じています。でも実際どのようにしたらいいか完璧にはわからず、課題感だけがある状態でした。しかしグラフィックファシリテーションで、自分の考えや気持ちが引き出され、皆さんに意思表明する体験を通じて、ファシリテーターの寄り添い方や、具体的な声掛けの方法を知ることができました。そして、ここで得た学びを、中学校の学年のリーダー達が集まる場で実践しています。
――会の初めに今の心境を聞く「チェックイン」ですか?

Sさん:そうです! 自然に会話が生まれて、場が和むんですよね。真正面から対話を始めるというよりは、みんな集まって、雑談ではなく、でも硬すぎない話から入って。ファシリテーションも「何」を感じているかという答えを求めるというよりは、「どう」感じてるかを聞くような。それにより、自分自身の内省が促され、より自分の本質的な思いを見つけられると思います。
――チャレンジ100で生徒の興味関心を引き出そうとする愛総中では、よりコーチング的な姿勢が必要とされますね。では、教科のことについて伺いたいと思います。Mさん、技術の教員として、愛総中はどんな学校になると考えていますか?
Mさん:技術の教員じゃなくても分かることですが、設備環境がものすごく素晴らしいです。これまで班で1台、あるいは2人で1台、共有して使っていたものを、愛知総合工科高校では1人で1つ使えるとか。教材、教具に関しても贅沢な環境にあります。ぜひ高校と協力して、この環境を贅沢に活用したいです。それにより、これまで教材や教具を共有して2時間3時間かかってた内容が、1人1台でやることで時間短縮できます。そしてこの余剰時間を活用して、生徒の興味を引き出すような取組をしたい。私の頭の引き出しには、環境が整ったらこういうことがしたい、チャレンジしたいというアイディアがたくさんしまってありますので。こういうことが愛総中らしさにつながっていくのではないかと考えています。
――ネタばれしてはいけないので、その温めているアイディアのイメージだけでも教えてもらえますか?
Mさん:例えばプログラミングにしても、ただプログラミングするだけではなく、ロボットを動かすとか、少しレベルの高いグラフィックスにも挑戦できると考えています。それには数学の知識も必要になるのですが、ただプログラミングができるというのではなく、何に繋がるかまで伝えたいと思います。
――しかし、こういう内容は教科書に載っていませんよね。先ほど「想像力は…」とおっしゃいましたが、根底には想像力を発揮した授業をしたいという願いがありそうですね。では社会はいかがですか?
Sさん:社会の授業で、愛総中だからこそできることはあまりないかもしれませんが、新しく作るこの愛総中に来る生徒が求めるものの中に、ものづくりやチェンジメーカーがあるのではないでしょうか。そこに向かっていく力を育てなければならないと思っています。具体的には探究する力。やはり自分で学び、発信できるようになってほしい。そのため、授業の内容をさらに追求して、自分でまとめたものを発信するなど、探究する力につながる授業を行いたいです。
――具体的な授業イメージはありますか?
Sさん:分野によっては、教え込むのではなく、最初に大きな課題を示して、それについて時間をかけて文章にまとめ発表する授業を行うことがあります。愛総中では、自分の追求する理工学的なテーマを決めて、それをまとめて発表する力が必要になるため、社会の授業で、この力を補完するようなことをやっていけたらと考えています。
――探究的な活動を通して身に付けて欲しいことが明確にあることが分かりました。この探究について最後に一言ずつお願いします。

Mさん:「探究」という言葉を易しい言葉に言い換えると、「夢中になる」だと私は思っています。学問に対して夢中になる。一個のことを夢中になって極めようとやり抜くと、一芸どころか実は多芸になって、できることが増えるのではないかと思っています。同時にいろんな人と関わるなかで、一人の人間として成長していってほしいです。夢中になって没頭することでいろんなものを得るでしょうし、一人じゃ絶対どこかで行き詰まる時があると思う。何らかの人との関わりはあるはずなので、そういうものも全部プラスの力に変えて、自己成長を促したいと考えています。
Sさん:近年、「どうしたいの?」と聞いても返事がないことが多くなってきたように感じています。私も年を重ねて、生徒との距離が離れていることもあるかもしれませんが、生徒が答えを教えて欲しいと思う、受け身な傾向が強まっているような気がします。だからこそ、授業では、こちらが「考えてごらん」と投げかけて、「こういうことを発信してみようか」など、寄り添ったり、時には待ったりして、生徒が気づきを得られるような環境を作りたいと考えています。
――まさにコーチングの姿勢ですね。ものづくりに触れられる充実した環境で、何を学ぶかも大切ですが、その先にどうなっていたいかも重要であるということを感じました。本日はお話しいただき、ありがとうございました。
Mさん・Sさん:ありがとうございました。
